歳時記

入梅に梅雨入り~急にここだけ暦と季節が近づく


2020年6月も中旬に差し掛かりました。
6月11日に、
東北南部、北陸、関東甲信、九州北部が梅雨入りしたとみられます。

それはさておき、二十四節気と同じ季節の上の日(暦日)、
その中でも補足にあたる雑説の中に「入梅」があります。
6月11日は「入梅」です。
でも大体の場合、
季節の上の日と実際の季節ってズレますよね?
季節の入梅と梅雨入りに関してみていきましょう。



梅雨入りとは

今年の梅雨入りは

2020年の梅雨入り状況〔速報値〕2020.6.20 12:00現在(気象庁ホームページより)

地方 2020年 平年差 昨年差 平年 昨年
沖縄 5月11日ごろ 2日遅い 5日早い 5月9日ごろ 5月16日ごろ
奄美 5月10日ごろ 1日早い 4日早い 5月11日ごろ 5月14日ごろ
九州南部 5月30日ごろ 1日早い 1日早い 5月31日ごろ 5月31日ごろ
九州北部 6月11日ごろ 6日遅い 15日早い 6月5日ごろ 6月26日ごろ
四国 5月31日ごろ 5日早い 26日早い 6月5日ごろ 6月26日ごろ
中国 6月10日ごろ 3日遅い 16日早い 6月7日ごろ 6月26日ごろ
近畿 6月10日ごろ 3日遅い 17日早い 6月7日ごろ 6月27日ごろ
東海 6月10日ごろ 2日遅い 3日遅い 6月8日ごろ 6月7日ごろ
関東甲信 6月11日ごろ 3日遅い 4日遅い 6月8日ごろ 6月7日ごろ
北陸 6月11日ごろ 1日早い 4日遅い 6月12日ごろ 6月7日ごろ
東北南部 6月11日ごろ 1日早い 4日遅い 6月12日ごろ 6月7日ごろ
東北北部 6月14日ごろ 同じ 1日早い 6月14日ごろ 6月15日ごろ

近畿、中国、四国、九州北部が昨年だけ遅かったのみで、
例年からするとここまで平均的に梅雨入りしています。
ちなみに北海道は梅雨がないので表に名前がありません

どこが梅雨を決めているのか

では梅雨明けも見てみましょう。
2020年梅雨明け状況〔速報値〕2020.8.7 15:00現在(気象庁ホームページより)

地方 2020年 平年差 昨年差 平年 昨年
沖縄 6月12日ごろ 11日早い 28日早い 6月23日ごろ 7月10日ごろ
奄美 7月20日ごろ 21日遅い 7日遅い 6月29日ごろ 7月13日ごろ
九州南部 7月28日ごろ 14日遅い 4日遅い 7月14日ごろ 7月24日ごろ
九州北部 7月30日ごろ 11日遅い 5日遅い 7月19日ごろ 7月25日ごろ
四国 7月30日ごろ 12日遅い 5日遅い 7月18日ごろ 7月25日ごろ
中国 7月30日ごろ 9日遅い 5日遅い 7月21日ごろ 7月25日ごろ
近畿 7月31日ごろ 10日遅い 7日遅い 7月21日ごろ 7月24日ごろ
東海 8月1日ごろ 11日遅い 8日遅い 7月21日ごろ 7月24日ごろ
関東甲信 8月1日ごろ 11日遅い 8日遅い 7月21日ごろ 7月24日ごろ
北陸 8月2日ごろ 9日遅い 9日遅い 7月24日ごろ 7月24日ごろ
東北南部 8月2日ごろ 8日遅い 8日遅い 7月25日ごろ 7月25日ごろ
東北北部 特定なし 特定なし 特定なし 7月28日ごろ 7月31日ごろ

沖縄は早々と6月12日に梅雨が明けました。
奄美地方は例年よりも3週間ほど遅れて梅雨明け、
西日本の各地も10日前後遅く
東日本8月にずれ込んでしまいました。
東北北部タイムリミット
後で述べますが、
立秋を迎えてしまったので「特定なし」になりました。

平均的には沖縄と奄美地方だけ6月中で、
後は7月中旬から下旬にかけて
です。

この表からもわかる通り、
梅雨入りと梅雨明けを決めているのは、
気象庁
です。
桜の開花も気象庁です。
初雪の発表も気象庁です。
スギ花粉、残念、環境省です。
(別に残念ではない)

ここであることに気づくと思います。

「ごろ」であってはっきり「11日」と言い切っていない。

昔は言い切っていたのに。

というあなた。そんなあなたは40代以上ですね。

ぼんやりはいつから

before 1995

はっきり日にちを指定しなくなったのは、
1995年(平成7年)です。
どうして1995年からはっきりとした日にちを発表しなくなったのか。
それは1993年(平成5年)と1994年(平成6年)が天候不順だったからです。

1993年

1993年は記録的冷夏でした。
梅雨が長引きしかも夏になると勢力を増して日本列島に晴天をもたらす、
太平洋高気圧が弱いままだったからです。
40代以上の方はタイ米やアメリカ米が輸入されて、
という騒ぎを覚えている方も多いと思います。
この夏の冷夏が原因で93年~94年にかけてこういう事態になりました。

気象庁の公開している、
梅雨入りと明けの日にちのデータをダウンロードして、
スプレッドシートでデータを作ってみました。
気象庁昭和26年(1951年)以降の梅雨明け(確定値)より

この年の梅雨明けの記録を見ると、
沖縄・奄美地方が6月25日に梅雨明けして以降、
それ以外の地方で「特定せず」という記録になっています。

これは「いつ明けたかわからない」
「明けないまま梅雨の季節から秋雨に移ってしまった」ので、
特定できなかったということです。

1994年

翌年の94年は前年に反して猛暑でした。
しかも梅雨にあまり雨が降らずいわゆる空梅雨。
それ故に梅雨が明けたかどうかの判断が難しい年で、
そして「実は明けてました」という遡っての梅雨明け発表に批判が集まりました。

after 1995

1995年

実は今発表されている
「6月11日頃に梅雨入りしたとみられます」という表現は速報です。
速報なので最終的には梅雨が終わった後に比較検討して、
9月1日に確定が出されます。

1995年からおよそ2年間は、
「関東地方は6月上旬に梅雨入りした」というような、
今よりもさらにぼんやりした速報を出していました。

これまた批判を浴びます。
しかし95年、96年とこの方式で押し通します

1996年

気象庁の梅雨入り・明け宣言、来夏から事実上復活(青鉛筆)

・気象庁は十九日、梅雨と入と明けの時期について、「旬の前(後)半」という言い方をやめ、「○○日頃」と表現することを決めた。来夏から梅雨入り・梅雨明け宣言が三シーズンぶりに事実上復活する。

一九九三年から二年連続で宣言後に修正。「季節現象は幅をもたせたほうが的確」と日の特定をやめたが、国会で「何だかわからない」「気象庁は逃げている」と質問されるなど、旬の評判は散々だった。

・新表現には、放送局側から「今日ごろ明けたとは言えない」と注文もついた。予報部は「あいまいなのではなく、科学的な正確さを求めた結果」とひたすら理解を求めている。

引用:1996年12月20日付朝日新聞

1997年からは現在の形に落ち着いたのです。

なにをもって梅雨入りか

基準はない

何をもって梅雨入りしたのかという明確な基準はありません。

このメーターが振り切ったから梅雨入りじゃ。

ということは無い。ということです。
複数の気象予報士の方のお話、
気象庁天気相談所の話を総合すると、

ない

のです。
ただ、週間予報を見たときに、
その日を境に雨や曇りの日が続いた場合に、
気象庁の本部と各地方気象台が、
地方ごとの日付がおかしくならないように、
(例えば沖縄より東北が先に梅雨入りするとか)
話し合って決めるということなので、
それなりに個々人には基準があるかもしれません。

ただ、梅雨入りに関してリミットがあります。
二十四節気で小暑までに梅雨入りの発表がないと、
梅雨入りの特定なし」ということになり、
それ以降に梅雨らしくなったとしても、
梅雨にはなりません。

梅雨明けは

梅雨明けも同様です。
基準はありません。各地方気象台の以下同文。
一時期、梅雨前線が停滞したらとか、
梅雨前線がそれ以上南下しないことが分かったらとか、
そういう説が出回っていましたが、

各気象台ではそういうところもあるかもしれませんが、
公式には「ない」のです。

考えてみたら前線というのは、
天気図を書いたときに便宜上書き足したわけで、
実際の空にはそんな線は出ていません。
だから途中で消えてしまったり、
急に現れたり別れたりするのです。

何のための梅雨入り・梅雨明けか

調整が悪いわけではない

かつては梅雨入りと梅雨明けの日にちは各地方ごとに、
ばらばらに行っており調整はされていませんでした。
具体的に何年から調整したかというのはわかりませんでしたが、
もし調整をしない場合どんなことになるのか。
調整をしていなかった頃の1963年の梅雨入りの表を見てみましょう

1963年

では今度は梅雨入りの一覧を見てみましょう。
気象庁昭和26年(1951年)以降の梅雨入り(確定値)より

沖縄地方が6月4日に梅雨入りしているのに対し、
東海地方が5月4日、関東甲信地方が5月6日。
この年沖縄の梅雨入りは後ろから2番目
残るのは東北北部という普通考えたらありえない順番です。
こういうことを防ぐためにも調整は必要なのです。

9月1日の確定

調整されるようになってからも、

「梅雨入りは速報で出した日の1週間後だったな。」
「梅雨明けは速報で出した日の2週間前だったな。」

といったことがあると確定では修正されて記録されます。
データベース上に残っているのは確定の情報のみです。

そんなことするなら発表しなければ?

批判したい気持ちもわかりますが、
気象庁とて見栄を張りたくて発表しているわけではありません

梅雨期は大雨による災害の発生しやすい時期です。また、梅雨明け後の盛夏期に必要な農業用の水等を蓄える重要な時期でもあります。一方、梅雨期は曇りや雨の日が多くなって、日々の生活等にも様々な影響を与えることから、社会的にも関心の高い事柄であり、気象庁では、現在までの天候経過と1週間先までの見通しをもとに、梅雨の入り明けの速報を「梅雨の時期に関する気象情報」として発表しています。

気象庁今年の梅雨入り梅雨明けのページより

つまり
発表しているのは「防災上の注意喚起」のためです。

梅雨の時期は雨が長く続き地盤が緩くなりがちです。
また近年ではとんでもない量の雨が降ったりして、
備えが必要な天気が増えてきました

梅雨明けに関しても、
雨の備えから暑さの備えへの転換が必要ですし、
急な大雨に備えて土嚢を用意するといった、
個人ではなく地方自治体の備えも必要になります。

そういった目的なので梅雨入り・梅雨明けは必要なのです。


入梅とは

入梅は雑節

雑節とは二十四節気などではとらえきれない、
季節の上でポイントとなる日のことを言い、
入梅のほかに八十八夜や二百十日などがあります。

入梅とはかつては、芒種以降の最初の壬の日か、
立春から135日目とされていました。

訳分かりませんね。

芒種は芒種の記事を参照してください。

芒種~二十四節気で二番目に読みづらい候

芒種を一回で読める人はそんなに多くないはず。 2020年の芒種は6月5日金曜日です。 芒種と書いてあって「ぼうしゅ」と一回で読める人は、 一体何人くらいいるのでしょうか。 調査したことはありませんが、 ...

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壬の日?そもそも何て読むのか。
「みずのえ」です。

年に干支がありますが、
実際は十干と呼ばれるものとの組み合わせです。
干支は12年で1周しますが、
前回の「寅」と次回の「寅」では違う「寅」なのです。

十干の並び順


こうおつへいていこうしんじん

ただ、組み合わせ方が干支(十二支)も動くし、
十干も動くという組み合わせ方なので、

甲子→乙丑→丙寅→丁卯→戊辰→己巳→庚午→辛未→壬申→癸酉→甲戌→乙亥
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・→癸亥→甲子

という感じで変わっていきます。全部で60通り。

60年で1周するので60歳が還暦にあたるわけです。

これが日にちにもついていまして、
芒種になった後で最初に来る、
壬○の日ということです。

現在では

現在では太陽の動きで決まっていて、

太陽の黄経が80度に達した日です。

また訳わからないのが出てきましたね。

黄経こうけいとは

地球上の位置を示す場合、
緯度と経度で表します
北緯〇度、東経△度という言葉は聞いたことありませんか?、
縦軸と横軸が交差した位置を示せば、
場所は特定できます。

同じことを星でもやってみたのです。
地球にドームをかぶせて、
そのドームに描いてある星が動くとします。

その中で太陽に関する言葉が、
黄道と黄経と黄緯です。

国立天文台暦のページより

黄道は太陽が一年かけて動いていく道筋を表します。
春分が0度です。実際の太陽はやや角度を付けながら一周しますが、
黄道は太陽が基準なのでまっすぐに一周しています。
上の図で横軸の一周が黄道です。
黄経は横軸の黄道上の位置、
黄緯は縦軸の黄道との角度の差です。

天球上を太陽が移動していって、
春分を0度だとして、
80度の位置まで移動したら「入梅」ということなのです。

入梅はどういう日だったか

入梅の時期によって、
田植えをいつにするかを決めていたのです。
雨がしとしと降る日でないと苗が定着しづらいので、
基準となる日を決めたのです。

現代の田植えは晴れた日に機械で植えます。
そして品種も変わりました。
実際には田植えは5月中に行われることが多いようです。

ですので、実際の季節と暦の上の日はズレていないように見えて、
やはり少しズレているのかもしれません。

語源は

梅の実が熟す時期に降る雨で「梅雨」となった

カビが生えやすく「黴雨」という字にしたが
語感がよろしくないので同じ読みで
季節的に関連があるものということで「梅雨」となった

などいろいろ説がありますが、はっきりとしていません。

要するに

  • 梅雨入りと入梅は別物
  • 梅雨入り・梅雨明けは防災上の観点から発表されるようになった
  • かつてはあてにならず日にちをはっきりさせないときもあった
  • 入梅は暦の上の日にちで農家はこれ基準で田植えをしていた
  • どちらも存在する理由があるが今年関東などが被ったのは偶然



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